厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「また五郎はそんなことを申しておるのか」


 私の憂いを笑い飛ばす御屋形様。


 だが私は不安でたまらなかった。


 気まぐれな御屋形様の御寵愛は、いつまで私の元に留まっていることができるのか。


 館には私よりさらに若い、美しい小姓たちが御屋形様の寵愛を狙っていると聞く。


 私とていつまでも若くはない。


 加齢とともに美しさが失われていけば……御屋形様は私をお払い箱にして、もっと若くて美しい者たちを。


 「いつも申しているであろう? 私がお前を愛するのは、その美しさゆえばかりではないと」


 御屋形様は私をなだめるように語る。


 「お前は重臣としても、武将としても、私にとってなくてはならない存在だ。まさに比翼の鳥、連理の枝」


 そして、二人で一つであるとくり返す。


 肉体的にも、精神的にも二人は一つであることを確かめ合いながら……。
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