厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 その年の11月。


 尼子経久(あまご つねひさ)が死んだ。


 現在の当主・晴久の祖父であり、尼子氏を出雲を中心とした強力な戦国大名へと育て上げたのは。


 この経久の功績。


 だが息子に先立たれ、孫の晴久に家督を譲ったのだが、その晴久は先の毛利との戦いに大敗。


 九死に一生を得て、ようやく出雲の居城へと逃げ帰ったのだった。


 この大敗にショックを受けた経久は、高齢もあってその後寝たきりになってしまい。


 ついに11月、静かに息を引き取ったのだ。


 尼子家を一代で発展させた英雄の死は、尼子一族内にさらなる混乱を引き起こしたのみならず。


 近隣の諸大名に大きな影響を及ぼした。


 もはや尼子家もここまでと見限った周辺の諸大名は、尼子への従属を断ち切り。


 大内家に鞍替えする者が相次いだ。


 そして彼らは御屋形様に、「尼子を攻めるのは今しかない!」と重ねて焚き付けたのだった。
< 63 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop