厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「前回は毛利家の救援という大義名分がございましたが、今回はややもすれば我々は侵略者という汚名を着せられます。加えて地の利もない尼子の本拠地に攻め込むとは、余分な犠牲が増えるだけかと存じます」


 「そう言われるが相良どの、このようにして周辺諸国の豪族たちも、軒並み尼子征伐の嘆願書を大内に送りつけてきた。この事実を見過ごせというのか」


 「彼らは雰囲気に乗じて無責任に、好き勝手申してるだけにございます。万が一大内が負けるようなことあらば、再び尼子に寝返るのは明白」


 「相良どのは我々が負けると申すか?」


 売り言葉に買い言葉。


 御屋形様が最も信頼を寄せるのは、この私。


 私を置いて他にはない。


 その私に対して、生意気な口答えを……。


 次第に私も苛立ってきて、二十歳以上も年上の相良に対して睨みを利かせていた。


 一触即発な空気が、評議の場を支配する。
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