厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「まあまあ、陶どの。相良どのもそこまでになさいませぬか」


 中立派の重臣たちが取りなしてくれたため、私と相良との険悪な雰囲気には終止符が打たれ。


 結局御屋形様は、私の意見を取り入れて出雲遠征を決意してくださった。


 「では年明け早々に、尼子の本拠地である月山富田城(がっさんとだじょう;現在の島根県安来市)攻略へ向けて、出雲への遠征を開始する」


 家臣同士のもめ事が激化する前に、御屋形様は決断を下してその場の雰囲気を一変させた。


 「なおこの遠征において、我が後継者・晴持(はるもち)の初陣の場とする」


 御屋形様のその一言に、評議の場はざわついた。


 御屋形様の養子であり次の大内家当主となる晴持さまの、初陣を兼ねる遠征と位置付けられてしまえば、相良ももはや反対はできまい。


 こうして年明け早々に、大規模な出雲遠征が実施されることとなった。


 大内家を挙げての遠征ゆえ、今回は総大将は御屋形様。
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