厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
***


 「相良の奴、無礼にも程があります。御屋形様のご意向に逆らうとは」


 私は未だに怒りが収まらなかった。


 「だいたいあの者は右筆上がり、政(まつりごと)や戦のことに関してはまるっきり素人ではございませぬか。なぜ大内家の一大事に口を挟むことを、御屋形様はお許しになるのですか」


 二人っきりになると私は、御屋形様に遠慮なく意見を述べてしまう。


 西国一の大名である大内家の当主に、このような口をきくとは。


 相良同様、家臣の分際で無礼極まりない程ではあるが。


 御屋形様と私とは特別な関係にあり、その寵愛に甘えて私はいつも言いたいことをはっきりと告げていた。


 この日もまた……。


 「あの者もあの者なりに、大内家そして私のことを考えて物申してくれているのだ。大目に見てやってはくれぬか」


 「御屋形様っ」


 優しく頭を撫でて、私の怒りを鎮めようとする。
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