厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 その晴持さまは。


 非常に聡明で文武ともに優れており。


 京の名門貴族・一条家の血を引く土佐一条家(一条家の一員が、応仁の乱の際に土佐に逃れたのがきっかけ)の血を引く美麗なる貴公子で、御屋方様からも非常に気に入られた。


 家臣からの信頼も厚く、晴持さまが家督を継げば、大内家はずっと安泰であろうと誰しもが強く信じていた。


 「晴持は姉上の子ゆえ本来は甥であったが、今は私の後継者として大切に育てている。いくら美しかろうと、手をつけることなど誰ができようか」


 御屋形様は私を落ち着かせるように、そっと抱き寄せる。


 「……大内家の嫡男の初陣には、華々しい成果が求められる。大内家の将来のためにも、お前の活躍が必要不可欠だ」


 その細く長い指が、私の肌をなぞる。
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