厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……年が明けて、天文11(1542)年1月11日。


 御屋方様は総大将として大軍を率い、出雲の尼子征伐へと出陣なされた。


 私を含む重臣たちも大部分が同行し、途中で毛利なども援軍として加わる予定。


 最終的には総勢四万以上の大軍勢となり、尼子の籠もる月山富田城に迫ることとなる。


 「陶どの、本日は天候にも恵まれまして」


 副将として御屋方様の背後に控える馬上の私に、同じく副将格にある晴持さまが微笑みかけてきた。


 「初陣への旅立ちの時が、このような晴れた朝でしたのは何よりです」


 青空に輝く太陽を見上げ、満ち足りた表情を見せる。


 「まさに幸先の良い出立となりました。大内軍の前途を暗示しているに違いありません」


 「同世代なれど、すでに戦の経験がある隆房がそばにいるだけで心強い。よろしく頼むぞ」


 「こちらこそ。大内家のために尽力させていただきます」


 晴持さまは私より四歳年下。


 初陣ということで少々緊張の面差しだったが、今回の戦は大内軍が絶対的優位との予想の下、さほどの危機感はお持ちではなかった。
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