厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 すでにここは敵国。


 地の利は相手にある。


 一歩一歩注意を払いながらの進軍を重ねている間に、季節は夏どころか秋に、いつしか冬の気配が忍び寄っていた。


 「出発から半年以上経過しても、未だ尼子の居城・月山富田城に臨むことすらできないとは」


 御屋形様がため息をついた。


 秋、十月になってようやく月山富田城近くに本陣を敷いたのだが、


 「月山富田城は標高が高い。そろそろ雪の季節となろう。このままだと尼子との決戦は、年明けまで待たねばならぬかもしれぬな……」


 「申し訳ありませぬ。私の見通しが甘かったのが最大の原因です」


 私は詫びることしかできなかった。


 この遠征を最も強く推した一人として、責任を感じずに入られなかった。


 まさかこれほどまでに、長期戦となるとは。


 尼子配下の者たちの抵抗が凄まじい。


 前回の戦は毛利の領土内だったため、地の利はこちらにあり、慣れない地での戦に戸惑い尼子は大敗を喫した。


 その勢いのままに、一気に尼子を叩き潰せるはずだった。
< 78 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop