厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 だが現実は……。


 もしかして前回とは、ただ単に攻守切り替えというか、攻める側と攻められる側が逆になっただけなのかもしれない。


 地の利を活かし、優位に立つのは尼子で。


 慣れない土地での戦に苦戦を強いられるのは、私たち……。


 嫌な予感は的中し、何の進展もないままその地で年を越す羽目となった。


 当然のことながら、軍勢の士気は徐々に低下。


 雪解けの春まで待とうものなら痺れを切らし、味方に戦線離脱してしまう者が現れる可能性がある。


 そこで本陣を移動することにした。


 尼子の籠もる、月山富田城を臨める位置に。


 雪深い中での本陣移動にはもちろん不満も出たが、このまま士気が低下し、規律が崩壊してしまうのを黙って見過ごすよりはましだと思った。


 尼子の城が常に見渡せる場所へと本陣を移したものの、やはり総攻撃は雪解けを待ったほうが無難であるとの軍事会議での結論。


 しかしまたしても待機を強いられ、月山富田城攻めが開始されたのはなんと二ヵ月後の三月になってから。


 すでに出陣してから一年以上が経過し、あまりの長期戦に皆うんざりしている。
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