厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「状況が悪化するばかりだ。私が出陣する!」


 「陶どの」


 何度も尼子が籠もる城へと突撃部隊を突入させたものの、その度に跳ね返されている始末。


 ここで私が出陣し、月山富田城突入を成功させ、軍勢の士気を上げるという一発逆転策を提案したのだが。


 「危険すぎます。ここは再度、石見(いわみ)の武将たちが城への突入を申し出ております。まずは彼らに任せたほうが」


 「……」


 他の重臣たちに引き止められ、私は出陣を思い止まり、本陣で御屋形様とともに成り行きを見守り続けた。


 石見の者どもが無事、月山富田城に突入してくれれば。


 だが。


 石見の武将たちは、月山富田城を攻めると見せかけて、そのまま城門より入場してしまった。


 そのまま二度と戻ってこなかった。


 つまり……我々は裏切りに遭ったということだ。
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