厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 撤退は壮絶を極めた。


 苦渋の選択で山口帰還を決断した大内軍の足取りは重く。


 事実上の敗戦に気落ちした軍勢の背後に、勢いに乗った尼子の軍勢が迫る。


 猛り狂う尼子の追撃と対峙するのは、殿を務めることとなった私。


 勢いに乗じここで退却途中の大内軍を叩きのめそうと、目の色を変えて襲いかかってくる。


 軍勢の数ではこちらが上回っているはずなのに、今や士気の差は著しく。


 大内軍はただ周防へと向かって逃げ延びるより他に術はない。


 御屋形様を先に行かせるため、私は軍勢の最後尾で殿として時間を稼ぐ。


 数え切れないほどの尼子兵を斬ったが、敵は際限なく現れる。


 途中で別れた毛利軍は、無事安芸までたどり着くことはできただろうか……。
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