厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 私は私なりのやり方で、この度の遠征失敗の責任を取ろうとしていた。


 今の私にできることは、この身を盾にして尼子軍を撃退すること。


 たとえこの身を犠牲にしようとも、御屋形様を一刻も早く、安全な大内領内にお逃がしすること。


 それが殿(しんがり)としての勤めであるし、不始末をしでかしたことへの償い。


 償いのためには、命を落とすことも厭わない。


 (……)


 ……嘘だ。


 二度と御屋形様にお会いできないかもしれないという思いがよぎっただけで、この身は引きちぎられそうなほどの悲しみに覆われる。


 もう一度御屋形様にお会いして、その腕の中で眠りたい。


 もう一度だけ、叶うのならば……!
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