厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 晴持さまが……?


 伝令の報告を聞いた時、全く実感が湧かなかった。


 だが俯いたまま体を震わせている伝令の様子を見ても、嘘をついているわけはない。


 しかも御屋形様の御前で。


 「どういうことだ。詳細を申せ!」


 顔面蒼白で言葉を失っている御屋形様に代わり、長老たちが声を荒げる。


 声が出ないのは、私も同じ。


 晴持さまに何があったのか。


 安全策ということで、中海から海路で退却を選択されたのに……。


 伝令の申すところによると。


 晴持さまは沖合いに停泊する船へと、小舟で移動なさっていた。


 その小舟が転覆してしまったというのだ。


 晴持さまは海に投げ出され、重い鎧を身にまとっていたことが災いし……、二度と浮かび上がることはできなかったと。


 「転落なさったというのか! ならば早急にお救い申し上げるのが、同行した者たちの役目であろう!」


 私は伝令に怒鳴ってしまった。


 「同行した方々が、手分けしてお探し申し上げたのですが……。水深がかなりあり、薄暗い海の中に紛れてしまい見つけることが叶わず……。加えて尼子の攻撃も始まり……」
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