厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 伝令はただ事件を伝えに急行しただけであり、晴持さま転落に責任があるわけではない。


 これ以上伝令を責めても仕方がないので下がらせ、捜索隊を急いで派遣することにした。


 だが転落からすでにかなりの日にちが経過し……。


 未だ発見されていないということは、もはや絶望の領域ではあるまいか。


 誰しもそう感じたのだが、御屋方様のご心痛を慮るととてもそのようなこと口にはできなかった。


 ただ発見されない限りは、生存の望みが残っている。


 もしかしたら海から自力で脱出し、尼子の攻撃から身を隠すためにどこかへ落ち延びられたのかもしれない。


 こちらに連絡ができない状態にあるだけで、無事に山口へとお戻りになる途中なのかもしれない。


 そのような万が一の奇跡に望みを賭け、捜索隊の連絡を待ちわび続けた。


 だが……。


 程なくして最悪の知らせが、ここ大内館に届けられることとなる。
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