【短編】月明かりの下で、愛を囁く
「じゃあ、何でっ!!」
何で黙ってたのよ。
意味が分からないわ。あなたの行動が。
「言ったら、どこかに……消えてしまいそうで……。ナルから……話してくれ……るのを待ってた」
今にも消え入りそうな声で話を続ける彼。
けど、騙されないから。
あの夜“ミカ”に向けた視線からは、確かに愛を感じたんだから。
「私は“ミカ”の身代わりなんでしょう? あなたはまだ“ミカ”が好きなんでしょう?」
私がそう言うと、彼は苦痛の表情からも悲壮な表情を垣間見せた。
だから、何であなたがそんな顔するのよ。
裏切られたのは、私。でしょう?
「身代わりは……ミカたち、なんだよ……」
ドサッ。
大きな音を立てて、彼はその場に崩れ落ちた。
膝を立てて肩で息をしている。
つらそうな表情はゆっくりと私を捉え、視線がぶつかると口元を緩ませた。
「……逃げてた、んだよ……」
「……どういうこと?」
彼の言葉に私の体が小刻みに震えはじめる。
「ずっと、ナルが……好きだった……」
好……き……?
誰が誰、を?
えっ?
「嫌われてる……と思ってたから……他の女を……代わりにして……た」
「待ってよ!! じゃあ何で、あの夜“ミカ”といたのよ!! 何であんな顔向けてたのよ。そうじゃなければ……」
そしたら、私だって……。
「ミカは、俺が……ナルのこと……好きって知りながら、付き合って……た。だけどな……振られたんだ。…ナルに告白、しろって……勇気……だせって」