【短編】月明かりの下で、愛を囁く
私の勘違い?
彼の口から語られた真実に、足がガクガクと震え出す。
すべては、逃げだした私たちのせい。
お互いに想い合っていたのに、関係を崩したくなくて。
あなたも私への気持ちを封じ込め、彼女をつくっていた。
ミカは、それでもいいってあなたと付き合いはじめた。
けど。
いつまでたってもあなたの心に居座り続ける私の存在に、痺れをきらした。
「いいかげん気持ち伝えな!」
って後押しされて。
あの夜、偶然会ったあなたたちは私の話をしていた。
“ミカ”に私との惚気話をしてたって。
あの顔は、私に向けてのものだったなんて……。
「ナル……早く、戻ってこいよ……」
……もう、無理……よ。
逃げてばかりいた私に罰が与えられたんだわ。
ほんの少し、勇気を出せばよかった。
逃げ出さずに、あなたと向き合えばよかった。
「……ごめん……ね……。ごめんね」
私の存在は月の光と同じ。
月は自ら光っているわけじゃないのよ。
太陽の光を浴びて、それを降り注いでいるだけ。
月の光は惑わしの光。
私の存在も、惑わしの存在。
ほら。太陽の光が届かない新月の日の零時が迫ってきた。