今夜はずっと、離してあげない。
大家さんがいい人なのは、出会った時から知っている。
けれど、その世話焼きっぷりが、ここで裏目に出るとは……っ。
「久しぶりに氷高ちゃんのお顔が見れてよかったわ。またね、氷高ちゃん。あなたも」
「はい。すみません、住人増やして……」
「いいのよ。元々2人で暮らしていたんだし、ちょうどいいんじゃないかしら?」
うふふ、と笑う大家さんは、あの不審者に手伝ってくれてありがとう、とお礼を言っていた。
どうやら、庭のプランターの配置換えを手伝っていたらしい。
……困ってる人を放っておけないタイプの人、なのかな。見た目不審者だけど。
「………またお会いしましたね」
「短い別れで」
「………本当に、すっごいやむを得ないことですが、あなたを、私の家に、しばらく、居候として住むことを許可します……っ」
「めちゃくちゃ渋々だな」
「頃合いを見て退居してくださいね……」
「はいはい」
その後、ふたり揃って、また氷高の表札がかかった部屋へと帰ったのであった。
─────そんな、高校入学式の数日前のコト。