今夜はずっと、離してあげない。
普段ドストレートに切り込んでいくくせに、こういう時だけ尻すぼみになってしまうのはどうしてなんだろう。
変なの。
「……別に、俺はどっかに出かけたいとか、そういうのじゃない」
「え?そうなんですか?」
てっきり、千住サマもあのメンツで出かけたいのかと思ってたけど。
そう思いながら千住サマを見上げていると、さっきまでの威圧感はどこへやら。
呆れたように肩の力を抜いて、お決まりの苦笑い。
「……俺は、氷高とたまにコンビニ寄って、一緒に肉まん買い食いするくらいで、ちょうどいい」
……ちょうどいいって、なんだろ。
ちょっとした疑問が頭をかすめたけど、そんなのどーでもよくなるぐらい、びっくりしたし、嬉しかった。
「いいんですか?」
「だから、ちょーどいいって言ったろ。それもたまにな。たまに」
「千住サマも肉まん恋しくなりました?!」
「氷高みたいな禁断症状は出てない」
千住サマの要望を叶えるどころか、こちらの要望を叶えてもらってる感じがする。
実際、そうなんだと思う。
やさしいやさしい、不良の皮を被ったおかあさん。
「それに、ここを追い出されたら困るしな」
「……それって─────、」
出かけた言葉は、やっぱり喉の奥に詰まって、出てこなくて。
「……千住サマは何まんが好きですか?やっぱり肉まん??」
「………いや。ピザまん」
「ひどい裏切り!!!」
──────後日、千井が千住サマになぜか殴られ叱られたと、本人から涙まじりに聞かされた。