今夜はずっと、離してあげない。
「…………、」
「…………」
どうしよう。どうするべき?
無言でじいいいっとガン見されるのもなかなかにキツいし、そもそも私、お金あんまり持ってないのでカツアゲされても困る。
冷や汗をダラダラ垂らしながら、ああ、月がきれいだなあ、なんて、現実逃避をしていたら。
─────ぐううう、
……どこからか、気の抜ける音が聞こえた。
「………、」
「………」
数秒間見つめ合い。
「………、ふっ、」
「笑うな」
笑ってしまった私の負け、だったんだと思う。
だって、こんな場面でお腹の音がなるだなんて思わない。
実際、ベンチの上で片膝を立てて座っている名も知らない不良少年も、私から逸らすことのなかった目を、ふいっと明後日の方向に向けていたから。