今夜はずっと、離してあげない。




ぱたぱたぱたっ、時折ぼたたたっと、降ってくる雨をしのいでくれるのは、残念ながらひとつの傘だけ。


あまり面積が大きくない傘にふたりで入るなんてこと、到底できやしない。

正直言って、全身びしょ濡れの彼に傘を傾けても意味はないと思うけど、このまま雨の中にずうっといさせるのは忍びないし。


片膝を抱えて、雨を凌げる物を何も持たない彼は、一体何をしにここへ来ているのやら。




「こんな雨の中公園のベンチに座ってるだなんて、バカじゃないですか?前にも言ったと思いますけど、風邪ひきますよ?」

「急に貶す」

「貶してないです。事実を言ったまで」




確か使ってないタオルがあったような、と鞄をごそごそ漁っていたら、目の前からくしゅっ、というかすかな音が。




「……ほら」

「…………まだ風邪はひいてない」




ぷいっと顔を背ける千住サマは、今だけは頼り甲斐のあるおかあさんじゃなくて、年相応の男子に見えた。



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