今夜はずっと、離してあげない。
「……真生は、何したんだ?」
「煮たり焼いたり、洗ったりしました。包丁は指まで一緒に切りそうだからって、持たせてもらえなくて」
「……よかった」
「今何に対してよかったって言いました?包丁持たなかったことに対してですか??私そんなに事故起こしそうに見えます??」
……なんだろう。この、はじめてのおつかいならぬ、はじめての調理をした子供にするお母さんっぽい質問。
傷が一切ついていない私の指を見て、安堵したような顔をした伽夜は、テーブルに並べられた料理をじいいっと吟味する。
シェフに見定められている気分になって、しゃんと背筋が伸びた。
「……まあ、あの黒焦げ騒動よりはいいんじゃねえの」
「待ってください、なんで伽夜が私の調理実習の時の騒動の話知ってるんですか?まさか凛琉から聞いたんですか?ねえ、」
矢継ぎ早に口から飛び出る質問の数々は、ぽんと頭にやさしい温度が降ってきた瞬間に、とけきえた。