今夜はずっと、離してあげない。




「がんばったじゃん」



ぽんぽん、くしゃり。

そうやって頭を撫でられて、思わずゆるゆると口角が上がってしまった。


パッと急いで口元を隠したからよかったものの、伽夜に見つかってたら絶対にからかわれてた。


……うん。やっぱり私、伽夜に頭撫でられると、すっごくうれしい。

うれしい、というよりも、しあわせ、って言い換えた方がいいくらいに、心が踊る。


……千井に頭撫でられた時は、こんなこと、思わなかったのに。褒められてるから、倍うれしい、のかな。



「……へへ」



あんまりにもうれしすぎて、耐えきれなくなってちょっと変な笑い声が出たけど、伽夜には気づかれなかったらしい。



「でも、今度から千井に教わるのはナシな」

「な、なんでですか?千井料理うまかったですよ?伽夜ほど手際が良かったとは言わないですけど……」

「なら俺に教わったほうが早いだろ」

「……え、教えてくれるんですか?」



今まで、一切キッチンには立ち入らせてくれなかったのに。


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