今夜はずっと、離してあげない。
千井家の人たちって、辛いものが好きなのかな?じゃあ今度、お礼に辛いもの持っていった方がいい?激辛カップラーメンとか、デスソースとか……。
「……おい、真生」
「あっ、は、はい?!」
思考が明後日の方向へと飛んでしまっていた私を引き戻したのは、伽夜の口から紡がれた私の名前。
慌てて真正面に座る伽夜へと意識を戻せば、箸をかたりと置いて。
「正直、味が染みすぎてじゃがいもの煮崩れが起きてるし、いんげんなんてふやふや。見目に関しては及第点ってところ」
うっ……、さ、さすが伽夜。批評に容赦がない。
確かに、千井にちょっと煮込みすぎたかもって言われたし、ちゃんと火の番ができてなかった私のせい。
今度はもっと時間に気をつけよう……と頭の中で反省文を書いていたら。
「でも、まあ」
言いながら、またお皿からひょいっとじゃがいもを掴んで、そのまま口の中にぱくり。
「真生にしては、よくできてんじゃねーの」