今夜はずっと、離してあげない。
……まあ、ここまで来て退場する気はさらさらないけれど。
私も腹をくくろう。そして……
………黙っていよう。
話している最中には一切口を割り込まない、不必要なことは絶対喋らない、なるべく相槌ですます、よし。
ぴしり、と石になった気持ちで背筋をのばして、テーブルの下で繋がれた手を同じ強さで握り返していると。
こつ、こつ、どこからか軽いヒールの音が近づいて。
「─────伽夜?……と、マオマオちゃん、だったかしら」
長い綺麗な黒髪をなびかせて、伽夜によく似たやさしい微笑みをたずさえた伽夜のお母さまが登場した。
「……あ、えと、すみません。あの時名乗ってなかったですね。私、氷高真生って言います」
「氷高ちゃんね。うん、おぼえた!」
むんっと、片手を胸の前で握りしめて、笑顔でうなずいた伽夜のお母さま。
……あ、なんか、この人が伽夜のお母さんって、しっくりくる気がする。