今夜はずっと、離してあげない。
伽夜のまあまあ、という言葉に地味にショックを受けながらも、むずむずするような、もどかしい燻りが消えない。
「………それだけを聞きに来たんなら、このあと予定あるし、帰るけど」
「……あ、」
目をうろうろさせていたお母さまだけど、やがて諦めたようにわらって、そっか、と呟いた。
それが、おわりの合図。
「……真生、行くぞ」
「……え、」
繋がっていた手が、引っ張られる。
伽夜が立ち上がったのにあわせて、私も立ち上がりかけて。その時、唐突に理解した。
なんで、伽夜が私にこの場に同席してほしいって言ったのか。
違ってたらはずかしいし、きっと後悔するだろうけど。
ここで何も言わずに、伽夜と一緒に立ち去ってしまうほうが後悔する気がして。
たぶん、……それは、伽夜も同じで。
「……あの!伽夜のお母さまは、なんで、伽夜に会いに来たんですか?」
私に、不器用な自分に、口下手な自分にかわって、聞いてほしかったんだと思う。