今夜はずっと、離してあげない。
*
「……に、二時間で準備しきるとは……、伽夜どれだけ器用なんですか……?」
「あんなの、動画見ればすぐできるだろ」
「いや私は10回見てもできません」
お昼の12時半。これぞまさしく有言実行。
私たちは、電車で少し行ったところにある大型ショッピングモールへと足を運んでいた。そこの広場では、現在小規模ながらもクリスマスマーケットが開催されているらしい。
伽夜に全てお任せした私はといえば、ゆるい巻き髪に、ハーフアップに結われた根元につけられた大きめのヘアクリップ。
アイラインは跳ね上げられ、目元は服と統一感が出るグレーを乗せて。口紅はこっくりとした赤色。
……私が普段しないのフルコース仕様だ。
「……これ、似合ってますかね」
「……俺の見立てに間違いはない。情けないくらいにな」
「え?それどういう意味ですか」
「なんでもない。……それより、人多いみたいだから、絶対手、離すなよ」
「あはは。……言われなくても離さないから大丈夫です」
人の波に揉まれながらも、軽く笑って伽夜の手を握った。
─────の、だが。
「……すみませんたぶんいや絶対はぐれました」
『だよな』
「す、すみませんんんんんっっっ……!!!」
見事、私は迷子となってしまった。