今夜はずっと、離してあげない。





「……に、二時間で準備しきるとは……、伽夜どれだけ器用なんですか……?」

「あんなの、動画見ればすぐできるだろ」

「いや私は10回見てもできません」



お昼の12時半。これぞまさしく有言実行。

私たちは、電車で少し行ったところにある大型ショッピングモールへと足を運んでいた。そこの広場では、現在小規模ながらもクリスマスマーケットが開催されているらしい。


伽夜に全てお任せした私はといえば、ゆるい巻き髪に、ハーフアップに結われた根元につけられた大きめのヘアクリップ。

アイラインは跳ね上げられ、目元は服と統一感が出るグレーを乗せて。口紅はこっくりとした赤色。


……私が普段しないのフルコース仕様だ。



「……これ、似合ってますかね」

「……俺の見立てに間違いはない。情けないくらいにな」

「え?それどういう意味ですか」

「なんでもない。……それより、人多いみたいだから、絶対手、離すなよ」

「あはは。……言われなくても離さないから大丈夫です」



人の波に揉まれながらも、軽く笑って伽夜の手を握った。





















─────の、だが。



「……すみませんたぶんいや絶対はぐれました」

『だよな』

「す、すみませんんんんんっっっ……!!!」



見事、私は迷子となってしまった。



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