今夜はずっと、離してあげない。



そう。序盤まではよかった。

ふたりで飲み物買って、散策して、そろそろマーケットのほうを見ようかって話になって、……で、そのあとが、きっといけなかったのだ。



『お前迷子の資質あるなら先言っとけ!!方向音痴は事前申告制だろうが!』

「わ、私も方向音痴の自覚なかったんです……!!」

『はあ?!じゃあ今までの外出はどう乗り切ってたんだよ!』

「他の人について行ってました!!!」

『………、なんかお前、いろんな意味で危ういな……』

「いま言い方に悪意感じたんですけど?!」



私が外のマーケットに行く前にお手洗いに行ったあと、迷子と化してしまったのだ。


……いや、今回は私も悪いとは思うけどっ、いちばんの原因はお手洗いから出た後、通路がふたつあるのがいけないんだ。うん絶対そう。

だってあんなの、迷ってくださいって言ってるようなものだもん。ただ、私が反対方向から出てあれ伽夜いないなって勘違いした結果うろちょろして余計迷ったなんてそんなそんな……、……………。



「す、すみませんでしたあ……っ!!」



ほんと、土下座するくらいに謝った。なんなら今ここで土下座する勢いでスマホの向こうに謝罪した。



< 396 / 415 >

この作品をシェア

pagetop