今夜はずっと、離してあげない。





たぶん、俺、相当浮かれている。



「はあ、……っ、思いっきりフラグ立ててたもんな、あいつ」



笑顔であふれたショッピングモールの中を場違いにも疾走しながら、俺は先刻の会話を思い出していた。


つい昨日俺の居候先から恋人へと名前が変わった関係性を持つ真生が、今朝家の中で不貞腐れたように浮かれて悪いか、と言った時は正直驚いたし、……や、何より、嬉しかった。

今日のデートだって、俺が真生の言葉に浮かれた結果、予定なんて微塵も立てていないくせに、さも前から準備していたかのように装って誘っただけ。


真生のために、なぜか俺がメイクやらなんやらまでして。……したことに後悔はないが、情けなくもその時点ですでに出かけると口走った自分の口を縫い付けたい気分だった。


だって、あいつ、似合いすぎだろ。

もとの素材、というかもとが良すぎてメイクとか必要ないし。したらしたで、綺麗さが際立って、俺が焦る。変な輩が寄ってこないかとか。



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