今夜はずっと、離してあげない。
「……ほんっと、いろんな意味で危うい」
自分の容姿の良さをわかっていない。
自分の言葉の破壊力をわかっていない。
……自分の価値を、全然まったく、これっぽっちも、わかっていない。
真生がいないと知った時、俺がどれだけ焦ったか。
情けないから、教えてやらないけど。
でも、少しも目を離したくないくらい、ずっとずっと、自分から目を追っていたいと思ってしまうくらいには、お前は俺にとって偉大な存在だよ。
今夜はずっと、……いや、これからも、離してやるつもりはないほどに。
「……っと、このあたり、のはず、だけど、」
そんなことを考えていたら、あっという間に例のツリーの前に到着した。
絶対動くなって念押ししたから、動いてないはずだけど……。
右から左へと、吐き気をもよおしそうなほどの人混みへ目を向けた、直後。
自分でも瞳が鋭くなるのを感じ、意識するまでもなく体が動いた。
「─────あの。俺の彼女に、なんか用ですか」