今夜はずっと、離してあげない。




「……あ、それか。悪い、気づかなかった」



持ってくる、と言って屋上から出て行った不審者。


……そして、自然と沈黙するこの場。

今にも北風のぴゅーって効果音がつきそう。今春だから北風は吹かないけど。




「……で?きみとちずはどーゆー関係?」



口火を切ったのは、不審者のお友達であるチイって人。


……どうしよう。不審者がいないからヘタなことは言えないし。……もうこの際、あの設定を貫き通すか。



「えと……実は、アレと親戚でして」




おずおずとそう言えば、チイさんの目が見開かれた。

……あ、これ、まずい気がする。



「え、ちずに仲良い親戚とかいたの?!……ん?でも、弁当入れ違う仲って何?名前も知らないとか、」




頭上にハテナを乱舞させているお友達に、思わず頭を抱えた。


ああっ、やっぱそこは変だよね!!不審に思うよね!もっと別の言い訳考えるんだった……。


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