今夜はずっと、離してあげない。
いまここで問題になるのは、この人をもし家に連れて行ったとして、その後どうなるか、ということ。
見るからに薄着だとわかる格好をして、このまま凍死されても夢見が悪いのは確か。
けれど、味をしめて我が家に通われても困ってしまう。
そんな関係になって、責任をとれる自信は残念ながら微塵もない。
やっぱりここは見て見ぬフリをするしか────。
そう、頭を悩ませていた私の目にふと映った、あるもの。
それは、公園に設置されているゴミ箱に投げ込まれている、紙の包み紙と、潰された空のペットボトルで。
「……ふう、」
切り替えるように頭を二度振って、すたすたと公園をあとにし、すぐ近くにあるマンションの一室へと入る。
そこでソファにかけていたブランケットを引っ掴み、またあの公園へと舞い戻る。
「……このくらいなら、いいよね」
そう独りごちて、自分を正当化し、そばに本日も購入した肉まんを置いておく。
この人が起きる頃には冷めてしまっているだろうけど、何も食べないよりはマシだと思ってもらおう。
……帰るついでに、どうか凍死しませんように、お腹が空きすぎてあの世へ逝ったりしませんように、とお参りするみたいに願った。