今夜はずっと、離してあげない。
……あんな戯言、放っておけばよかったのに。
自然と手を伸ばした先は、いつもは高い位置にある彼の髪の毛。
少し湿ったやわらかい銀髪は、手触りがよくてずっと撫でていたいくらい。
……やわらかい。ずっと、やわらかかった。
出会った時から。
この家に住む過程で一悶着あったものの、それでも、この人が作り出す世界は、いつだってやわらかくて、やさしかった。
私にとって、もうそうなっていたんだ。
……煽ってしまった理由は、大体想像はついてる。
あの時は自分でもわからなかったけど、いまならわかるよ。
……たぶん、いつかのわたしと、似ていたから。
立ち上がって、ぱちん、と明かりを落とす。
その時、ふと目に入ったそれ。
いつもは伏せられているものが、なぜか立った状態になっていた。
あれ。千住サマがやったのかな?と思いながら、それをパタンと伏せて、布団に入った。