意識して、すきにして、
すきにして


「なんでさあ、おれにはくれなかったの?」


隣の机に突っ伏したかやが、不貞腐れたようにつぶやいた。


「……ほしかった?」


放課後の教室。顔だけをこちらに向けた彼と、目を合わせたら。


「──……そんなでもなかったかも」


言われた。


なんだよ、いらないんじゃん。


「かや、髪切るんじゃなかったの」

「あー、切りたかった、かも」

「切ればいいのに」

「切ったほうが、まいみは、すき?」


一瞬、言葉に詰まって。


「切んなくても、きらいじゃないけど」


便利な答え方をした。だってだって、わたしの発言ひとつで髪型が決まるとしたら、だいぶプレッシャーなんだもん。


どっちでもいいんじゃない、とは流石に言えなくて、でもほぼ言っちゃった。

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