意識して、すきにして、


「なんだよ、ちげぇの」

「ちげぇますね」


口調をかやにそろえて、上から下へと撫でる。


ちがいませんけど、ほんとは。──言わない。


「ふぅん」


立ち上がったわたしを、わざわざは見ず。


ただ前を見ている。


かやらしいな。普通は、少し上を向くとか、上目遣いのかたちになるけれど、目を向けるとか、すると思うんだ。


普通、という、わたしが決めた枠組みに入り込んでこないかやだから、すき。


わたしのほう、見てくれればいいのになぁ。いや、見ないでくれていいんだけど。


見られてしまったら困るから、立ち上がったんだけど。


それでも見てほしくなるのは、わたしの複雑な思考回路と欲のせい。

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