御曹司、家政婦を溺愛する。

新堂隼人の自宅を出て大量のゴミ袋を地下の収集所へ持っていき、オフィスビルの事務所に着いたのは、正午の少し前だった。
私が帰るまで彼が部屋から出てこなかったことが、何より救いだった。
事務所に戻ってきた私を見かけた西里マネージャーが「休憩?」と、話しかけてきた。
「家主に「帰れ」と追い出されました」
と言うと、彼女は眉間にシワを作った。
「この場合、契約者が家主と別人だから、家主に私たちの了承を得てくれないと困るのよね。明日からどうするか契約者のお母様と話をするから、今日は定時まで事務処理の手伝いをしてくれる?忙しくて書類整理が追いつかないの」
と、コンビニに寄ってきたと思われる袋を片手にデスクに戻っていく。

西里マネージャーは家政婦を希望する顧客データから私たちの家政婦のスタッフの管理、シフト調整までの最終チェックまで行っている敏腕マネージャーだ。お客様がどんな家政婦を希望しているのかを調べて、相応しいスタッフを派遣する見極めが彼女の武器である。そのため彼女は私たちの性格やクセをよく知っている。
だから、いくら指名といえど新堂隼人の家政婦に私が本当に適さないのであれば、彼女は幸恵夫人に頭を下げてでも断って別のスタッフを行かせるだろう。
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