御曹司、家政婦を溺愛する。

またその翌日から、私の仕事内容が少し変わった。事務所の仕事の合間に、単発で短時間の家政婦のシフトが組み込まれている。だからといって新堂隼人と繋がりを断ったわけではない。

午後七時。
「もしもし。私、三〇一号の新堂隼人の家政婦の佐藤と申します。訳あってお部屋に伺えないので、家主の新堂さんの様子をお母様へご報告するため、いくつか質問させて頂きたいのですが……」

レジデンスの受付へ連絡して、彼の生存確認が私の日課として加わった。

「新堂さんは今日はお出かけになりましたか」
「食料品などの購入をされた気配はありましたか」
「宅配便や来客はありましたか」

まるで離れて暮らす母親が、小さな子供の心配をしているような質問だ。しかし、契約している以上、何もしないわけにはいかないので、レジデンスに行けないのなら彼の様子を教えてくれる人に聞くしかない。
コンシェルジュの人たちは新堂隼人と家政婦のトラブルを知っているようで、「大変ですね」と同情されてしまい、彼に関する簡単な質問に応じてくれた。

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