御曹司、家政婦を溺愛する。
そして三日目の正午。
「お昼なので休憩に行ってきます」
と、ソファでスマホを見ている新堂隼人に声をかけた。
私はいつもお弁当を持参しているので、お昼はオフィスビルの地下にいることが多い。地下にはたくさんの観葉植物や大きな岩から流れる人工の滝があるオアシスがあり涼を楽しむことができる。ベンチもあるので最適な休憩場所だ。
「思ったんだけど」
ポツリと聞こえた声に、トートバッグを肩にリビングを出ようとした私は足を止めた。
新堂隼人は目をキョロっとさせて、私に言う。
「俺の昼飯って、どうなってるの?」
「え」
私も目をパチパチさせて彼を見た。
「最初に申し上げたと思いますが、昼食のご準備は契約の中には含まれておりません」
お母様も申し上げていたと思いますが、と付け足して答える。
新堂隼人は特に文句を言うわけでもなく、口に手を当てて「なるほど」と呟く。
「それって、昼食も契約に追加するってことはできるのか?」
「契約の内容は変更できませんが、オプションという形で付け足すことは可能だと思います。ただ、契約者のお母様の承諾がないと……」
と、話終わる前に、彼は電話をかけていた。