御曹司、家政婦を溺愛する。
エアコンの効いた快適な部屋の中で、できたてのかき玉うどんを啜る新堂隼人。
「ん。うまい」
「それは、よかったです」
向かい合ってお弁当を食べる私は返事をする。
かまぼこと長ネギのかき玉うどんに、冷凍してあったご飯をあたため、キャベツときゅうりのナムルを作った。
ちなみに私のお弁当は昨日の作り置きのハンバーグと卵焼き、わかめご飯だ。
「佐藤、そんな小さな弁当で夕方まで働けるのか」
「昨日の作り置きを詰めてきただけなんです。お腹がすいても仕事なんですから、定時まで働きます」
と言って、私は腕時計を見た。
ヤバい。
あと五分で休憩が終わってしまう。
慌ててご飯を口に運ぶ私に、新堂隼人は「俺と一緒に食えばいい」と言う。
「ダメですよ。会社で休憩はちゃんと決まってるんです」
「家主の俺が一緒に食って欲しいと言ってるんだから、いいんだよ。食い終わったら、しっかり仕事をすればいい。お前は相変わらず真面目だな」
と、彼はそう言って笑った。
あの頃の面影が残る笑顔に、ドキッとする。
私は咄嗟にその気持ちに、蓋をした。