御曹司、家政婦を溺愛する。
「わっ、私は大丈夫ですっ。事務所に着替えがありますから、着替えて戻ってきます」
「会社まで戻って着替えても、こんな雨じゃまた同じように濡れるに決まっている。着替えなら貸すから風呂に入ってこい。服は洗って乾燥すればいいから」
「でもっ……」
上から下まで絞れば水が出る私を、新堂隼人は浴室へと連れ込む。
「そのままじゃ風邪をひく。早く脱いで行け」
「でもっ」
断ろうとすると、彼が顔を近づけてきた。
両目を吊り上げた、怒っている表情にギクリと体が固まる。
綺麗な顔をしている人は、怒った顔をすると本当に怖いことを初めて知ったかもしれない。
ギンッと睨んでくる視線が逸らせなくて泣きそうになる。
「じゃあ、俺が脱がせてやるよ」
新堂隼人はそう言って、たっぷりと水分を含んだTシャツに触れた。
Tシャツの裾を両手で掴んで、ゆっくりと持ち上げていく。その目は私を見据えたままだ。
肉つきの良い自分の腹部が露になっていく。
心臓が口から飛び出しそうになるくらい、ドキドキが止まらない。
──好きだった人に、こんなポッチャリな体は見せられないっ!
「わっ、わかりました!お風呂、行きますからっ」
脱衣所で大声を出してしまった私。
もう恥ずかしくて、顔が上げられない。
「お願いですから、これ以上は……」
情けない声に、彼の手はゆっくりと下がっていく。
新堂隼人の表情が一変して、優しくなる。
「残念。佐藤の肌、白くて綺麗でちょっと興奮したのに」
と、耳元で囁かれてゾクゾクと背中を震わせる。彼はクスリと笑って脱衣所から出ていった。
「お、お腹……見られちゃった」
手渡されたバスタオルに顔を埋め、大きく唸った。