御曹司、家政婦を溺愛する。
お風呂で体をあたためて脱衣所に戻ると、私の服が洗濯機の中で回っていた。ネットの袋も一緒に回っているところを見ると、下着も洗っているようだ。
「下着……」
いろいろ見られてしまったと思いながら、洗濯機に手をついて「はぁ」と落ち込む。
「……下着??」
私の着替え、どうするの?と気づいて、下着を置いた棚を見た。
「……」
棚の上に、ピンク色の小さなフリルの着いた可愛らしい上下の下着が置いてある。
「?!?!?!どういうことっ?!」
すっかりパニックになって脱衣所を飛び出した。
「新堂くんっ、あれっ、あの下着は……!」
と、声を上げながらリビングのドアを開ける。
「どうした?早かったな」
とキッチンで菜箸片手に新堂隼人がこっちを見る。
私は脱衣所の方へ指をさして、
「あの、あの下着は……」
と、同じセリフを繰り返す。
「ああ。あれはコンシェルジュに頼んで買ってきてもらったんだ。サイズは同じものだから大丈夫だと思う」
と、彼はサラリと言って軽く微笑む。
「こ、コンシェルジュ……」
少なくとも彼自身が買いに行ったのではないことがわかり、内心ホッとする。サイズを知られるくらいは仕方ないと妥協する。
「それより、佐藤」
彼に言われて顔を向ける。
「その格好、俺としては嬉しいが……風邪ひくぞ?」
そういえば。
下着に動揺して、自分はバスタオル一枚だった。
「きゃあっ!!」
悲鳴と同時に脱衣所に駆け込んだ。
新堂隼人の自宅だが、お客様の自宅なのに。有るまじき振る舞いをやってしまったことに、どっぷりと自己嫌悪に浸る日を味わった。