御曹司、家政婦を溺愛する。

刻み海苔の乗った、美味しそうなたらこのクリームパスタが目の前にあるというのに、沈んだ気持ちがなかなか浮かび上がってこない。せっかく新堂隼人が作ったというのに。
「早く食わないと冷めるぞ?あ、そうだ。佐藤、今日は弁当はあるか?」
「弁当」と言われ、私もそうだったと気づいて、トートバッグを開いた。
テーブルの上にお弁当を置く。彼はそれを手にすると、パカッと蓋を開けた。今日は白飯に焼き鮭、卵焼き。地味なメニューだ。
「お、鮭が入ってる」
新堂隼人は鮭の切り身をパクリと食べた。
「え」
「ん?」
ポケッと口を開けていると、
「ああ、この弁当とパスタを交換な」
と、彼は機嫌良くお弁当と自分のパスタを食べ始めた。

昼食後、午後五時まで働く。借りたパーカーは丈の長さが膝上くらいまであるが、仕事をすると太腿が見えてしまうので心許ない。
エプロンも洗われてしまい、パーカー一枚での仕事だ。
「あの、何見てるんですか」
「ん?佐藤の足って白いなあ、と思って」
「セクハラで訴えますよ?」
床掃除が本当にやりにくい。

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