御曹司、家政婦を溺愛する。
「ほら、言ってる側からこれだ」
「……でも」
頭がぼんやりしているせいか、言葉が上手く出てこない。
「早退したんだから、業務終了。ここからは俺とお前はただの同級生だ」
「新堂さん……」
と、すぐそばにある彼の顔が不快そうに歪む。
「お前、同級生に「さん」付けか?俺のこと、そんな呼び方だったか?」
「……新堂、くん」
呼び直すと、歪んだ顔が甘く笑う。
「よく出来ました。少し寝た方がいい」
と、私を脱衣所から連れ出して寝室のドアを開けた。
自分でベッドメイクをしたけれど、新堂隼人のベッドに寝るのは躊躇う。
──過去のあれこれを思い出して、とても眠れない。
「あの、私はソファで……」
「ダメ。熱があるんだから、布団でしっかり寝ないと治らない」
新堂隼人にそう言われても、私は首を左右に振る。彼は「じゃあ仕方ない」と、微笑んだ。
「このままベッドで大人しく寝るか、ソファで俺に膝枕をされて寝るか、どちらか選べ」