御曹司、家政婦を溺愛する。
「……んっ」
体に何かの重みを感じて目が覚める。寝ぼけたまま見渡すと、目の前の遮光カーテンから陽の光が薄く差し込んでいた。
朝なんだ、とぼんやりと思う。
腰の辺りに違和感があり、それが何かわかると「ぎょっ」と一瞬で頭が冴えた。
──こ、これは。
背中に感じる、人肌のぬくもり。
腰から腹部に抱きしめられてる、人の腕。
耳元で聴こえる、人の寝息。
そして、私の頭の下は……腕枕。
ドキドキドキ。
これ以上ここにいたら心臓が止まると思い、そっとベッドから抜け出す。
体が軽くなった。額に手を当てると、熱は下がったようだ。
私は改めて薄暗い部屋の中で、新堂隼人の寝顔を見た。
イケメンは、寝ていてもイケメンなのだ。長いまつ毛も、鼻筋の通った顔の輪郭も、シミひとつない綺麗な肌も。
寝顔を見つめる。
新堂隼人の許嫁は、この顔を何度見ているのだろう。きっと、数え切れないくらい見ているんだろうな、と思った。