御曹司、家政婦を溺愛する。

……パーカーがピンクのパジャマに変わっている。
「それも、これはシルク……」
いつ着替えたのかあまり覚えていない。新堂隼人が様子を見に来たところは覚えているのだが。
自分で無意識の中で着替えたのか、それとも……。
想像するだけでも熱が戻ってきそうだ。

シャワーを借りて汗を流す。
そして脱衣所に綺麗に畳まれた自分の服を見つけて着替えた。
「……」
綺麗に畳まれた下着には、恥ずかしくて顔から火が出そうな思いだった。

キッチンカウンターに置かれた黒いデジタル時計は午前十時を過ぎている。毎朝六時に起床している私が、こんなに寝てしまうとは。
身支度を整えて、モップで音を立てないように床を掃除する。シルクのパジャマはクリーニングに出すとして、借りた服は洗濯する。

食事はブランチでいいかな。ピザトーストにサラダパスタにしよう。
そんなことを考えていると、リビングのドアが開いて新堂隼人が入ってきた。
「佐藤……」
「新堂くん、おはようございます」
彼は驚いているようだった。
「どうしたんですか?」
と聞くと、彼は脱力したようにソファに腰を下ろした。
「いや、起きたら佐藤がいなかったから、もしかしたら帰ったのかと……熱は?体調は?」
「おかげさまで、すっかり。あのパジャマ、すごく着心地がいいですね。お金払いますね」
と、私はトートバッグから財布を出した。

「最高級シルクのブランドパジャマ。五万円」

金額を聞いて、財布がポロッと落ちた。

さすがセレブ。
私なんて千九百八十円の綿のパジャマを買うのに、二週間も悩むのに。

硬直している私に、新堂隼人は笑う。
「金はいらない。お前が着てくれたら、それでいい」
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