御曹司、家政婦を溺愛する。
「南田はお前が学校に来なくなって、その理由を聞き出そうとみんながアイツに迫って、毎日大変だったんだ」
「え……」
彼は私の知らなかったことを話し始めた。
「みんながお前と仲が良かった南田に「佐藤はどうして来ないんだ」と言われ続けてた。南田は「知らない、人様の家のことに口を出す気はない」と、佐藤のことを誰にも言わなかったんだ。アイツは良い奴だと思った」
「……うん」
桜子が私のために体を張ってくれたことが嬉しくて、堪えられず涙が落ちる。
「桜子に、お礼言わなきゃ」
「そうだな。お前の次に良い奴だからな」
「え?」
新堂隼人は私の頭をぽんぽんと軽く撫でる。
その仕草に、ドキドキしてしまう。
「新堂くんだって、優しいよ?」
「俺が?」
彼はアーモンド型の目を丸くする。
私はまだ、覚えている。
「先生に頼まれたノートを半分持ってくれたことも、体育祭の徒競走で褒めてくれてことも。泣いていた時も、何も聞かずに慰めてくれたことも。新堂くんは心の支えになる言葉を、私はたくさんもらったんだよ」
思い出に浸っていた私は、ふと顔を上げると、新堂隼人は口を手で塞いで顔を横に背けていた。
「……」
「新堂くん?」
「……ばか。今、話しかけるな」
そう言って、彼はソファから立ち上がりリビングを出ていった。