御曹司、家政婦を溺愛する。
夕方になり、そろそろ帰ろうとトートバッグの中身を確認していると、
「晩飯、食うだろ?」
と、リビングに新堂隼人が入ってきた。
「いえ、もう十分お世話になったので、かえ……」
「食っていけよ、作ってやるから。ついでに明日は日曜なんだから泊まっていけよ」
「いやいやいや」
私は慌てて手を横に振る。
「お互いに自分のやることだってあるだろうし、私も二泊もさせてもらったら……」
「俺は別にお前のために時間を割くことくらい平気だけど。お前がどうしても気が引けるなら、明日の朝送ってやるよ」
「あ、明日の朝……」
何故明日の朝なのか、不思議に思った。
新堂隼人は機嫌良さそうに、冷蔵庫から肉や野菜を取り出す。
「そう。明日顔を合わせれば、月曜から毎日会ったことになるだろ?」
「まあ……そうなるけど」
平日の間は家主と家政婦ですけどね、と思いながら返事をする。
「佐藤、サラダのレタス、ちぎってくれないか」
「あ、はい」
まさか彼と二人でキッチンに立つことになるとは。新堂隼人が隣にいることで緊張してレタスをちぎる私を、彼が優しい目で見ていることなんて、知る由もなかった。