御曹司、家政婦を溺愛する。
高校時代、新堂隼人に許嫁がいるという噂は生徒たちの一つのビッグニュースになっていたので覚えている。
相手は同じ学年の大河内美織。彼女はストレートの黒髪が綺麗な、肌の色が白いお人形のような大和撫子だった。
三年の時に転校してきた彼女だが、その時からすぐに新堂隼人の許嫁だと公表して、休み時間は彼と一緒にいることが多かった。
しかし彼が他の女の子と一緒にいること嫌って女の子に意地悪をしていると噂があったが、虫一匹殺せそうにない大河内美織が、人に嫌がらせなんてできるのかと思っていた。
「料理人の夢を諦めたんだから、結婚くらい好きな女としたいよな」
「新堂くん……」
彼らしくない弱々しい声で、泣きそうな顔をしている。が、すぐに元の凛とした顔になり、私に目尻を下げて笑った。
「で、ちょっとヤケになって友達とか呼んで、朝まで騒いでいたってわけ。ああ、勘違いするなよ。あの女たちは友達が連れてきたんだ。アイツは仕事があるからって先に帰って行ったんだが、その後女たちが突然脱ぎ出して迫ってきたから帰らせようと思っていたところに、お前と母さんが来たんだ」
まあ、すごいタイミングだったけどな、と腕を組んで頷いた。