御曹司、家政婦を溺愛する。
あの日の朝の出来事は理解出来た。
そして、彼が好きな女性のために仕事を頑張っていたことも納得した。
胸がチクチク痛んだのは、きっと許嫁の他に好きな女性がいる、という事実だ。
優しい新堂くんに愛されている女性、か。
どうやら私は二度目の失恋を味わうみたいだ。
そう思うと、だんだん居た堪れない気持ちになってきた。
ここまできて、また新堂隼人に惹かれていたなんて。
ぽん。
頭を撫でられる。
「今はお前が家政婦として来てくれたことが良かったと思っている。少し調べたけど、家事代行でも色々資格があるんだろ?資格があればその能力が認められるってことなんだ。佐藤が頑張ってると思ったから、俺ももう少し頑張ってみようと思う」
「新堂くん?」
見上げた彼の顔は、何か吹っ切れたような、影が見えていた瞳が生き生きとしている。
「俺、月曜から会社に行くよ」
口角を上げる彼に、私も笑顔で頷く。
新堂隼人の未来のために、好きな女性と一緒になれるように「頑張って」と言ってあげたい。
その裏腹に、少しずつ落ち込んでいく自分も隠すことができなかった。