御曹司、家政婦を溺愛する。

通話を終えた受付嬢が、
「専務の新堂が今から取りに来ますので、佐藤様はここでお待ちになるように……」
「その必要はないわ」
と、彼女の言葉を大河内美織が遮った。
青い封筒を胸に、彼女は眼光鋭く睨んできた。
「佐藤……そう、佐藤鈴。最近お義母様が隼人さんのところに家政婦を雇ったと聞いたけど、あなたのことだったの。高校の時は目障りで、学校に来なくなって清々したのに。まだ隼人さんの周りをウロウロしているの?」
「それは……」
言いたいことはいろいろあったが、新堂リゾートの看板や社員の前で言うことではないと思い、口を噤んだ。ここは引き下がった方がいいと判断して「失礼します」と頭を下げた。
踵を返そうとすると、

「迷惑よ。二度と隼人さんの前に現れないで」

と、大河内美織の刺々しい言葉が、私を新堂リゾートから追い出した。

この日の午後、再び関口さんから連絡があった。
『専務からの伝言です。夕食はいらないので、今日は作業が終わりましたらお帰りください』
私は「わかりました、失礼します」と返事をした。

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