御曹司、家政婦を溺愛する。

メインのパスタが用意され、桜子がボンゴレビアンコを食べようとした。

「私、桜子に会ったら謝ろうと思ったの」

これを言うために、彼女を呼び出したようなものだ。
「実は私が学校を休んでからのこと、初めて桜子以外の人から聞いたの。私たち家族が借金を抱えて夜逃げしたってこと、桜子は誰にも言わずにいてくれたんでしょ?辛い思いをさせて、本当にごめんなさい。私たちは桜子のおかげで、ちゃんと働くことができている。恩人だと思っているの。どれだけ感謝してもしきれないくらいだわ」

新堂隼人から聞いて、ずっと思っていたことが言えて、スッキリした。
すると、桜子は持っていたフォークを置いた。その表情は迷っているというか、困っている、という感じだ。

「鈴。私、謝らないといけないわ」
と、ポツリと言った。

「本当は鈴のこと、誰にも話してないわけじゃなかったの……」
「……え?」

──だって新堂くんは、桜子は誰にも話してないって……。

桜子はチラチラと私を見ながら話す。
「鈴、本当にごめんね。口止めされていないし、お互い大人になったんだから落ち着いて聞いて欲しいんだけど」
と、前置きした。
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